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私のお菓子をできるだけ多くの人へ、だけど余らせないために|焼き菓子工房「beco」オーナー 渡辺 祐美子さん・後編


趣味からお菓子作家、そして現在は工房をもつ渡辺さん。

活動の幅が広がるにつれ、お客さまも少しずつ増えていきました。


いまでは、beco(ベコ)のインスタグラムのフォロワーは約4,500人。

イベント出店では1,000個を売り切ったことも。


それほど多くのお菓子をつくりながらも、ほぼいつも売り切ってしまうと言う渡辺さん。


いったい、なぜなのでしょうか。尋ねてみると、becoの販売方法に理由がありました。



廃棄は出さない、だけどより多くのお客さまに届ける

ーRenameのどういうところに共感していただけたのですか?


渡辺:アパレルを通して「社会貢献」をされているところです。実はアパレル業界のことはよく知らなかったのですが、廃棄の多さには驚きました。


そういう問題を解決する手段として、ブランド名を表示しないで再利用。そうすることで、販売者は廃棄をなくせるし、消費者は普段買えないものを買えるし、販売者と消費者の両方に良いことがある。


みんなにメリットをもたらしつつ社会貢献に繋がる事業というのが、すごいなと思いました。


ーありがとうございます。社会貢献でいうと、becoでは環境に配慮した取り組みなどはされていますか?


渡辺:なかなか難しくて動き切れていないのが正直なところですが、お客さまに商品をお渡しするときの袋は、ビニール製ではなく紙製を意識的に使っています。


それから、becoでは廃棄が出ていません。お菓子をつくる過程を工夫していて、結果的に廃棄が出ないようになっているんです。


ーどういうことですか?


渡辺:まず、バースデーケーキやギフトは受注販売なので余りません。それから、カフェで委託販売するお菓子も、あらかじめ売れる数を予想してつくっているんです。


ーどうやって売れる数を予想するのですか?


渡辺:基本的に私は工房にいて、カフェには立っていません。なので、売上データを分析します。すると、曜日やシーズンによるお客さまの購買変動の傾向などがわかるんです。それをもとに、クッキーなどの日持ちがする商品とマフィンなどの日持ちがしない商品のバランスを整えて、お菓子の供給量を変えています。


でも最近はありがたいことに、お客さまも増えて一気にたくさん売れることもあって。そういう予想外なときは、その日のお客さまの流れに合わせて工房でバタバタしています。「余裕をもって少なくつくる」ではなく、「ギリギリで完売」を目指しているので。


ーそれはできる限り多くのお客さまに届けたい、という気持ちがあるからですよね。イベント出店のときは、データが少なくて予想するのが難しそうですが……。


渡辺:それでも一応、これまでの経験からイベントではかなり多くの数が売れると見積もっています。なので、思い切ってたくさんつくります。


ーそれほど多くのお菓子を売り切るために、なにか工夫はしていますか?


渡辺:より多くのお客さまの目を引くようなディスプレイを意識します。古道具を使ったり、作家さんのお皿を使ったり、グリーンを飾ったり。素敵に見えるように雰囲気を大切にしています。


また、イベントの場所もたくさん売れる要因の一つだと思います。というのも、私は自分のお菓子を評価してくださる方、好きと言ってくださる方が集まる場所で販売したいという想いがあります。なので、イベントではそういう人が多く来てくれているのかもしれません。

4月に東海市で開催された「altien (アルトゥエン) 2019」では1,000個、6月に愛・地球博記念公園で開催された「こぼれるサラダと落ちたホールケーキ」では1日に400個を完売しました。



お客さまは、SNSとつくり手同士の繋がりから

ーでもリピーターを大切にするだけだったら、becoはここまで多くの人から愛されるお店になっていませんよね。どうやって新規のお客さまにお店を知ってもらうのですか?


渡辺:それが、私もよくわかっていないんですけど……(笑)。たぶんインスタグラムだと思います。最初と比べるとフォロワーさんもかなり増えました。


ーなにかテクニックがあるのですか?


渡辺:写真の撮り方を気をつけるとか、細かいことを地道にやっているだけです(笑)。あとは、バースデーケーキの写真を投稿すると反響が大きいので、その宣伝効果は大きいかもしれません。becoのメインの客層はママ世代ですが、バースデーケーキは幅広い世代で買ってもらえるんですよ。

becoインスタグラム(@beco_gashi)



ーほかに新たにお客さまを呼び込む方法はありますか?


渡辺:刈谷のほかの作家さんがbecoを紹介してくれて、そこのお客さまが来てくれることもあります。刈谷には「つくり手」の数がまだまだ少ないので、お互いの繋がりが強く、交流も多いんですよ。


私もつくり手の人たちとは仲良くさせてもらっていて、刈谷のつくり手が集まるマルシェに参加したり、コラボイベントを開いたりします。たとえば、年に1回はhacroさんという刈谷のアパレルのお店とコラボして、私のお菓子をhacroさんで販売させてもらっています。


beco×hacroコラボイベント



ーつくり手だけではなく、お客さまも含めた刈谷のなかの繋がりができそうですね。


渡辺:それについては、刈谷のつくり手の人ともよく話します。つくり手同士の繋がりのなかにお客さまも入ってもらうことで、「刈谷に来たらこういうお店が回れるよ」と提案できたらいいよね、と。


たとえば、お昼はここで食べて、食後のお菓子はここで買って、帰り際にふらっと服を見にいく。そういう刈谷のつくり手のお店を巡れる体験を広められたらいいなあと思います。


感謝を忘れずにbecoを続けていく

ー今後の展望はなんですか?


渡辺:やっぱり、自分のお店を開きたいです。工房ももっと大きくしたいと思います。


ーでも、自分のお店を持ったら受注販売がメインではなくなって、廃棄について考えることが増えそう……。


渡辺:そうなんです。でも、「ギリギリで完売」という目標からはぶれたくないので、週2~3日だけオープンするお店が理想だと考えています。また、敷居が高くて入りづらいようなお店にはしたくなくて、いろいろな方がふと立ち寄れるようなお店にしたいです。


ー今後は刈谷にとどまらず、全国の方にもbecoのお菓子を知ってもらいたいという考えもありますか?


渡辺:はい。でも人に任せるのではなく、どうしても「私の手でつくったお菓子」をお客さまに食べてほしい。これは私のなかで譲れないのですが、それだとお店も大きくならないので難しいなあと思っています(笑)。


ー最後に、becoをやっていて良かったと思うのはどんなときですか?


渡辺:子どもに、「お母さんがつくるお菓子が一番美味しい」と言われたときです。子どもも私の活動を積極的に応援してくれているんです。そうやって子どもが興味を持ってくれるのも、私が楽しく仕事している姿を見せられているからだと思います。


私が大好きなお菓子づくりを仕事にできたのは、間違いなく家族の協力のおかげです。そのため、常に感謝は忘れないようにしています。子どもに割く時間もうまくつくって家族のことも大切にしながら、becoを続けていきたいです。

* * *


『常に大事にしていることは“丁寧に”仕事をするということです。


それは、お菓子を作るときも、ラッピングをするときも、お客様と接するときも。』


と、渡辺さんはおっしゃいました。


“丁寧に”


その渡辺さんの想いがお客さまにも伝わっている。

だから、becoは愛されるお店なのかもしれません。

▼beco

住所:愛知県刈谷市高倉町2-507 2F

問い合わせ先:bakebeco@gmail.com

営業時間:11:00~17:00 (※日月休み)

HP:http://bakebeco.jugem.jp/

Facebook:https://www.facebook.com/becogashi/

Instagram:https://www.instagram.com/beco_gashi/

渡辺 祐美子|プロフィール

1981年生まれ、長崎県長崎市出身。大学は英文科に所属し、卒業後はカナダでのワーキングホリデーを経験する。結婚・出産後は、女性の社会復帰推進を目指すボランティア団体で活動。それをきっかけに、趣味から派生してお菓子作家活動「kirary」をはじめ、2016年には愛知県刈谷市で焼き菓子工房「beco」をオープンした。素材にこだわった体にやさしいお菓子は刈谷を中心とした多くの人から愛されている。

撮影・執筆=中原 愛海

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